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フィラメントスプールホルダの製作 [3D_printer]

 約6年前に書いた「フィラメントホルダ」の記事で紹介したスプールホルダを今まで使っていました。先日リールの淵ぎりぎりまでフィラメントがまかれている場合、回転抵抗が大きくなるという欠点があることが判りました。

今まで使用しているスプールホルダ


 その他、今まで使ってきて気になった点として

  • 取扱い
     二つのユニットの幅をリール幅にぴったり合わせる必要があるので少し面倒
     この問題は回転部分を横長の筒状にすれば解決できる

  • 回転抵抗
     ベアリングの回転抵抗は小さいのですが、リールの淵を受けているので滑車の原理で抵抗が増幅される
     やはりスプールの回転中心部をベアリングで受けた方が回転抵抗は少ないはず
     特にTPU等の柔らかいフィラメントを使う上ではフィラメントの抵抗を極力小さくしたい

  • フィラメントの湿気対策
     湿気対策としてフィラメントを密閉ケースで囲みたいが今までのホルダはケースの中に入れての運用が難しい

 そこでスプールの中心をボールベアリングで保持するスプールホルダを作ってみました。
 ネジは使わずに組み立て式にしてボールベアリングに固定したセンターポールでフィラメントスプールを支えることで回転抵抗を最小限にしています。

 ベアリングの固定についてはABS樹脂の弾力性を利用してパチッとはめています。

 フィラメントスプールの幅は今まで使ったものでは95mmが最高だったので100mmまで対応することにしました。

CADでの設計画面


 また、フィラメントスプールのホールサイズがまちまちなのも悩ましい点ですが、スペーサを使うことで 46mm ~ 60mm まで対応するようにし、1mm 間隔で保持対象の直径を調整できます。

 保持する直径を可変にするような機構を色々考えたのですが、最終的には最もシンプルな構造であるスペーサーで押さえることにしました。

★2020/07/28 追記 {
 スプール取付時にスペーサーの調整がやり辛かったのでスペーサーを2ピース構成にして片方を180度以上にすることでポールにはまり取付易くなりました。
 ネジ式の場合は一旦ポールから抜き取る(何回も回転させる)必要があるのでスペーサーの方が取付が楽だと思います。
 下図も差し換えました。
}

センターポールスペーサー


 プリント出力したフィラメントスプールホルダが下の写真です。

出力したスプールホルダ


★2020/07/29 追記
 今回作成したスプールホルダのSTLファイルは下記からダウンロード可能です。
 使用したベアリングは外径19mm、幅6mm、内径6mmの品番 626ZZ のものです。
 商用目的以外であれば使用可能とします。

 ・FilamentrSpoolHolder_V003_20200803.zip

★2020/08/03 Ver0.03 直径200mmのリールに対応できる範囲で高さを低くした
★2020/08/02 Ver0.02 結合部のマージン幅等を微調整


★2020/08/05 追記
 「フィラメントの湿気対策(その2)」の記事に本スプールホルダを使ったフィラメントの湿気対策について記載しました。


★2020/12/04 追記
 「フィラメントスプールホルダの製作(その2)」の記事に外周支点型のホルダ制作について記載しました。




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デルタ式3Dプリンタの静音化 [3D_printer]

 「デルタ式3Dプリンタ(Kossel Reprap)の購入」の記事で書いたデルタ式の3Dプリンタは調子よく動いていますが、造形時のステッパーのテクノミュージックのような音が気になり夜中は印刷していませんでした。

 「光造形式3Dプリンタの購入」の記事で書いた光造形(LCD方式)の3Dプリンタはファンの音はそれなりですが、音自体が広い周波数範囲を含んでいるためか、夜中に稼働させても気になるようなことはありませんがFDM方式プリンタと比較して造形物の精度は高いものの強度が弱いので強度が必要な構造物はFDM方式の3Dプリンタで出力するようにしています。

 FDM方式のプリンタの消音化のため、かなり前にebayで下の写真ようなサイレントブロックを購入済みでしたが造形精度が低下するというような情報もあり取付けていませんでした。

★2020/08/24 追記
 ゴムの弾力性を利用してステッパーの振動音を低減する部品を一般的にはステッパーダンパーと言うみたいです。

静音化のためのステッパー用サイレントブロック


 FDM方式の3Dプリンタのドライバを交換することでステッパーの動作音を静音化できるようなので挑戦してみました(参考:TMC2208 datasheet

静音化のためのステッパードライバ(TMC2208)


 この静音化対策の結果、ステッパー動作のキュルキュル音は全く無くなりました^^
 強いて言えばエクストルーダーのドライバは従来のままにしたのでリトラクト時に微かにステッパーの音がするくらいです。

 ネット上の静音化改造に関する情報は Anycubic i3 MEGAEnder 3 Pro 等のメジャーな3Dプリンタが多く、私の使っている FLSUN KOUSEI に関する改造例は見当たりませんでした。
 そもそも購入が2017年1月なのでとっくに販売終了していてMarlin(ファーム)のバージョンも古く、TMC2208には対応していません。

 そこで今回、Marlinのバージョンアップも行うことにしました。
 現時点での Marlin の最新は2.0.xのようですが旧Marlin(バージョン不明:version.hが無い)からの移行が楽なように一つ前のバージョンである Marlin-1.1.x.zip(中身は1.1.9.1) を採用することにしました。

 尚、Arduino IDEも1.8.13にアップデートしました。

 今回行った作業概要を自分のためのメモの意味も込めて以下に記載します。
  1. Marlinのダウンロード
     Download Marlin のサイトからMarlin-1.1.x.zipをダウンロードし、zipファイルを解凍

  2. コンフィグファイルの選定
     私の使っている機種は販売終了になっているので最も近い機種を検討した結果、FLSUNの kossel_miniのようだったので解凍フォルダの Marlin/example_configurations/delta/FLSUN/kossel_mini 内にある
      ・Configuration.h
      ・Configuration_adv.h
    を marlin 直下に上書きコピー

  3. 新ドライバ(TMC2208)のライブラリのダウンロード
     静音化のためのドライバを使用するためにはTMCのライブラリをインストールが必要です
     Trinamic driversに書いてあるようにMarlin1.1.9でTMC2208を使うためには次の手順でドライバのインストールが必要
    1. Go to TMC library homepage at
      https://github.com/teemuatlut/TMCStepper
    2. Click Clone or download and Download ZIP
    3. n Arduino IDE and go to Sketch -> Include Library -> Add .ZIP Library…
    4. Point to the downloaded file and click Open

  4. Configuration.hファイルのカスタマイズ
    1. 購入時のキット組立時に使ったMarlinのソース内にあるConfiguration.hの内容を反映
      ヘッダファイルの構成もかなり違っていた(旧版は行数が615行だったのにVer1.1.9では2053行)ので一つ一つ確認しながら反映した
    2. ドライバの設定
       今回はX,Y,Zの3つのステッパーを新ドライバに変更し、エクストルーダーは従来のドライバ(A4988)にしたので下記の変更を行った
       今回のようにTMC2208をシリアル制御しない場合はTMC2208_STANDALONEを設定すればいいようです

      #if 0 // 20200716 skyriver change for TMC2208
      //#define X_DRIVER_TYPE A4988
      //#define Y_DRIVER_TYPE A4988
      //#define Z_DRIVER_TYPE A4988
      #else
      #define TMC2208_DRIVER_TYPE TMC2208_STANDALONE
      #define X_DRIVER_TYPE TMC2208_DRIVER_TYPE
      #define Y_DRIVER_TYPE TMC2208_DRIVER_TYPE
      #define Z_DRIVER_TYPE TMC2208_DRIVER_TYPE
      #endif

      //#define X2_DRIVER_TYPE A4988
      //#define Y2_DRIVER_TYPE A4988
      //#define Z2_DRIVER_TYPE A4988
      #if 0 // 20200716 skyriver
      //#define E0_DRIVER_TYPE A4988
      #else
      #define E0_DRIVER_TYPE A4988
      #endif

    3. ステッパーの方向変更
       TMC2208ではステッパーの動作方向が逆になるので下記の変更する

      // Invert the stepper direction. Change (or reverse the motor connector) if an axis goes the wrong way.
      #if 0 // 20200716 skyriver change for TMC2208
      #define INVERT_X_DIR true // DELTA does not invert
      #define INVERT_Y_DIR true
      #define INVERT_Z_DIR true
      #else
      #define INVERT_X_DIR false // DELTA does not invert
      #define INVERT_Y_DIR false
      #define INVERT_Z_DIR false
      #endif

  5. コンパイル
     ヘッダファイルの修正が完了したらコンパイルする
     "Error while detecting libraroes included by c:/Usersskyriver..."のエラーが発生したが https://forum.arduino.cc/index.php?topic=591592.0 を参照すると特に問題ないと書いてあったので特に対処はしていない

  6. コントローラーへ書込み
     今まで使っていたのはRamps Plus2 BT7200 V1.8.26ですが、今回は予備で買っておいた BT7200 V1.9を使うことにした
     V1.8.26では基板中央のシリアルヘッダピンにジャンパーがしてあるが、ネットで調べたところ、V0.9ではジャンパは不要

  7. TMC2208のVref調整
     今回の作業で重要なポイントであり悩ましくもあるリファレンス電圧については

    • 使用しているステッパーはSL42STH40-1684Aで最大電流はImax=1.68A(Irms=Imax/1.414)
    • ネット情報ではマージン込みで0.9掛けとか最大値の半分くらいにし脱調するようなら増やしていくとか1V程度がいい等の情報あり

    だったので 1.6 / 1.414 x 0.9 更にマージンとして0.9掛けし、Irms = 0.9A とし下記のサイレント化に関するサイトのFAQのページの自動計算で
      Vref = 1.27V
    で調整した
     ドライバ自体は結構熱くなるが触れる程度だったので問題ないと思う

      FREQUENTLY ASKED QUESTIONS

    ★2020/07/26追記 {
     4時間以上かかるプリントを実行したところ2時間くらいでNGになっていました(下の写真)
     気付いた時点で緊急停止しホットエンドをホームポジションに退避後の写真ですがY軸(写真左下のステッパー)の位置が大きくずれたようです。
     コントロール基板はヒートベッドの下にありますが空気の流れが良くないので新ドライバの温度が上昇し一時的にシャットダウン したようです(TMC2208は143℃で自動的にシャットダウンする)
     新ドライバはコントロール基板上にX,Y,Zの順番で並んでいるのでY軸のドライバが最も放熱条件が悪い状態でした・・

     上記でVrefをステッパーのスペック内の最大電流値から算出しましたが、これは間違いです。
     3Dプリンタの造形動作に必要な電流値で決めるべきで、理想としては造形動作に必要なパワーが得られる最小値とすべきです。
     必要以上の電流をステッパーに供給しても発熱増大、電源ユニットの発熱も増加、万が一異常な動作になった場合にパワーがありすぎてハードを壊すより脱調した方がいい等、必要以上に電流供給してもいいことはありません。

     対策として
    • Vrefの見直し
       とはいっても造形動作に必要な最小の電流値を見つけ出すのは大変なので上記のIrms=0.9Aを約20%削減し、Irms=0.7Aとしました。この場合、上記サイトの自動計算からVref=0.99Vとなるので、ドライバのVrefを1.0Vで再調整しました。
       因みにYouTubeにあった https://www.youtube.com/watch?v=0agoD4VQRnk でもVrefは1Vと言っている(4:12あたり)

    • 冷却用FANの追加
       ドライバの冷却のために4cm角の12V0.1AのFANを取り付け、吸い込んだ空気がドライバに当たるようにしました。

     上記の2つの対策後に5時間弱掛かる造形を実施しましたが、問題なく出力できました。

    モジャモジャ発生
    }


 最後に今回の変更前後のコントロール基板の写真を貼っておきます。

コントロール基板(before)


コントロール基板(after)

★2020/07/25 追記
 Filament Cooling Fan がオンのままで制御できなかったので調査した結果、V1.9のコントローラではコネクタ位置が変更になっていました。シルク印刷で「Fan12V」と書いてあるコネクタに変更後、制御可能になりました。上の"after"の写真も差し換えました。


★2020/07/23 追記
 Twitterにポストした動画付きメッセージを貼っておきます。



★2020/07/26 追記
 デルタ式3Dプリンタでは定番のロッドのガタツキ音低減のためにスプリングをABS樹脂で作って取付けました。もともとロッドのガタツキ音はあまりなかったので若干効果あったかなぁ くらいの結果でした。

ロッドノイズ低減スプリング


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TPUフィラメント対応とフィラメントの湿気対策 [3D_printer]

 「エクストルーダーの交換検討」の記事の冒頭で書いたようにTPUフィラメントを使用するためにエクストルーダー部のドライブギア(フィラメントを送り出すギア)直後のフィラメントの遊びの空間を無くすためアタッチメントを作成し付けています。(写真のグレー部品)

エクストルーダーでのTPUフィラメント対策


 その後、TPUフィラメントを使っていてフィラメント詰りが発生することがありました。
 詰まった際に、アンロードしたフィラメントの状態が下の写真です。
 右側がノズルに接していた部分になります。

詰まったフィラメントの状態


 フィラメントの形状を見るとヒートシンク内で蛇行して詰まったようです。
 予備として手持ちで持っているヒートシンクを確認してみるとフィラメントの通り道に直径約9mmの太い部分が5mm以上あるようです。
 テフロンチューブがヒートシンクの中まで(ノズルの手前まで)伸びている構造のものもあるようですが、私の使っているホットエンドはヒートシンクの中にはテフロンチューブがないタイプのものです。

ヒートシンクとチューブカップラー


 TPUフィラメントを使用する場合、エクストルーダーからノズルまでの間のフィラメントの通過部分に遊びがあるとそこでフィラメントが湾曲して詰まってしまう可能性があります。

 そこでテフロンチューブを使ってヒートシンク内の隙間を無くすスペーサーを作成しました。因みにテフロンの融点は327℃なので耐熱的にも問題ないはずです。

 チューブカップラーのネジ側の内径に近い太さにするためチューブの穴を広げました。
  1. 半田ごてで温めてチューブの穴を広げます(左図)
  2. 千枚通し等を使って丸く広げた状態で冷まします(右図)

半田ごてで加熱 丸い状態に保ちつつ冷却


 作成したスペーサーとヒートシンクを並べると下の写真のようになります。これでフィラメントの遊び空間がなくなるのでTPUフィラメントがたわんで詰まることもなくなりました。
 感覚的には遊びのある部分が5mm程度以上あるとTPUフィラメントをノズルから押し出す抵抗が大きくなった際、フィラメントが湾曲して詰まる可能性が出てくるようです(フィラメントの押出量や硬さ等にも依存)。

ヒートシンク内蔵用スペーサー


★追記 2021/09/30 {
 チューブカップラーにはテフロンチューブを突き抜けて通せるような穴口径の大きいタイプがあり、このタイプのカップラーに交換することで上記のスペーサーが不要になりました。

テフロンチューブを通せるタイプのカップラー
}

★追記 2020/07/28 {
 TPUなどのフレキシブルフィラメントで造形する場合、スプールホルダーがスムーズに動くことが重要です。
 「フィラメントスプールホルダの製作」の記事に回転抵抗を最小化するためのスプールホルダの製作について記載しました。
}


 次にフィラメント保存時の湿気対策についてですが、従来から使っていたジップロック付き袋にシリカゲルと一緒にフィラメントを入れていました シリカゲルは下の写真のようにお茶パックに入れ、使っていました。小さな袋閉クリップが無かったので小型のものを自作しています。

シリカゲル用袋(従来)


 シリカゲルが湿気を含んできた(青色の粒の色がかなり薄くなった)のでタッパーに入れて電子レンジに2分程度かけて乾燥させます。

シリカゲル(乾燥前) シリカゲル(乾燥後)


 シリカゲルの乾燥作業の際に複数のお茶袋に分けて入れていると作業が効率的ではないので今回から水切り袋を使い、シリカゲルをまとめて入れることにしました。
 また、ジップロックの袋に穴が開いてきたのでフィラメントが5~6個入る大き目の圧縮袋に交換しました。
 それぞれの写真が下記で両者ともに100均での調達です。

のびる水切り袋 トラベル用圧縮袋


★追記 20200715 {
 上記の「のびる水きり袋」はシリカゲルをレンジで加熱後の温度が高い状態ではシリカゲルをおもらしする場合があったので下の写真の「水切りネット ストッキングタイプ」に変更したところシリカゲルが漏れなくなりました。(シリカゲルを冷やしてから入れないと漏れる)

水切りネット
}

 水切り袋の口は袋閉クリップで塞ぎます。これでシリカゲルの乾燥時の作業が結構楽になりました。

シリカゲル用パック(のびる水切り袋)


 圧縮袋は完全密封ではない(吸気して閉じても少し膨らんでくる)ですが、格納するフィラメントの数に融通が利くのがメリットだと思います(実はお米用の密封ケースも購入したのですが収納数が固定なので今は使っていません)

★変更 2020/07/12
 下記写真をアップデートしました。圧縮袋内の湿度は30%です(温度は26℃)

フィラメント保存時の湿度


★追記 2020/07/18
 保存用フィラメントボックスとして17リットルのキッチンボックス(アスベル キッチンボックス 17L 「ウィル」 NF-45)を購入してみました。
 フィラメントを4個収納するのに丁度いいサイズで圧縮袋よりも密閉性は高く、26℃で湿度が27%程度になりました。

 湿度計はまだマスキングテープで仮止め状態ですw

フィラメント保存用ボックス(17L)








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