ポケコン(PC-G850)用小型シリアルケーブルの作成 [ポケコン]
「ポケコン(PC-G850V)の購入」の記事でパソコンの USB に接続するシリアルケーブルの作成について書きましたが、これをご覧になられた Old68fun さんのブログ記事の「PC-G850V用USB-シリアルケーブルの作成」でケーブル一体型の USB シリアルケーブルでも信号の極性をカスタマイズできる FTDI 社のチップを使用したものがあることを知り、手持ちのケーブル(下図)を確認してみましたが駄目でしたorz
このケーブルはかなり前に AliExpress さんで数百円で購入したものです。今使っている USB シリアル変換はポケコン購入時に作ったものでサイズも大きいし、丁度半田付けしてみたい気分だったので汎用基板と表面実装部品を使って小型のポケコン用シリアルケーブルを作ることにしました。
表面実装部品を使うのでハーフピッチの汎用基板を使う予定でしたが、ピンヘッダのピンが入らないことから 2.54 mm ピッチの通常の汎用基板を使うことになりました。
ネットではシャープ製ポケコンの周辺機器接続端子用のガイド付きピンヘッダを時々見かけますが、ガイド部分も3Dプリンタで自作します。
表面実装部品以外で必要な部品は下図になります(写真のピンガイドは前のバージョンなので突起部分が短い)。このような細長い形状の基板のカットは億劫でしたが「ミニテーブルソーの購入」の記事で書いたミニテーブルソーがあるので気軽に基板をカットできるようになりました。
下図が最初に作った回路図です。トランジスタを使って送受信の信号を反転しています。ポケコン側の CTS はポケコンの RTS を折り返すようにしました。
しかし、ポケコンに接続してみると、モニタのWコマンドでヘキサデータを保存しようとしてもまったく出力されない状態でした。
ポケコンのシリアル通信時の波形例をネットで探しましたが中々いい例が見つからなかったのでロジアナで確かめてみました。
ポケコンの周辺機器接続端子の信号をロジアナで観測したものが下図で CTS 信号を 10K の抵抗で Vcc に接続した瞬間にシリアルデータが出力されました。モニタから「W100,100」を実行した際の波形です。
Wコマンドでのヘキサデータ送信時は送信のみなので RTS(送信要求) 信号がアクティブにならず、このために CTS(送信許可) 信号がアクティブにならないことが原因で送信できなかったことが判りました。これは flow 制御設定が"RS/CS"でも"none"でも同様でした。このため下図の回路のように CTS をシリアルケーブル側の Vcc にプルアップすることにしました。
この変更を行った後に PC-G850 と PC-G850V で確認した結果、問題無く送受信できるようになりました。
待機時に SD, RD 共に low レベルなので消費電流を下げるという意味では下図のようにトランジスタを入れ替えた方がいいですね^^;
コレクタ抵抗も 10K に変更しました。配線し直そうかとも思いましたがピンヘッダのピン部分に直付けのトランジスタ等があるので止めましたw
配線した基板の写真も貼っておきます。フラッシュを焚いた写真では特に半田付けした基板が小汚く写ってしまいますが、裸眼で目視するともう少し綺麗ですw
「ワイヤリングペンの作成」の記事で書いた自作のワイヤリングペンを使ってウレタン線で配線しました。通常ピッチの汎用基板なのでトランジスタを傾けて半田付けしています。
下図は横から見た写真です。ピンヘッダのガイドもいい感じですね。ピンガイドの直下に半田付け箇所を作ってしまったのでガイドが少し浮いていますが、ガイド自体がかなりきつめなのでずれることは無いと思います。
基板が完成したのでCADでケースを設計しました。ネジを使わないはめ込み式です。
3Dプリンタで出力したケースに入れるとそれなりに見えますね。万が一、ケーブルを引っ掛けた時に直ぐ抜けるようにケーブルとの接続はピンヘッダに刺しただけにしておきました。
ピン側と同様にピンの逆側も3Dプリンタのベッド面なのでツルツルしています。ポケコンの曲面に合わせた形状にするとカッコ良さそうですが、素朴な直方体型のデザインにしています。
今回作成した USB シリアルケーブル部の拡大写真です。写真だと黒くて良く見えませんが想定通りコンパクトに仕上がりました。
増設メモリボード(EborsyEEP:右側)と今回作成したシリアルケーブル(左側)をポケコンに装着するとこのようになります。
★追記 2023/11/25
低消費電流化への配線変更を行っていないのでパターン設計してみました。プリント基板ではもう少し小さくできそうでしたがこれ以上小さくてもあまりメリットが無いこと及びケースをそのまま使いことから上記の汎用基板で作成したものと同じサイズにしました。
今回は汎用基板で作成したものをそのまま使う予定でしたが、プリント基板の製造が5百円程度でできるようになったので試作品からプリント基板化する人も多いようですね。
★追記 2023/11/26
電源をオフしたまま接続した場合を考慮するとトランジスタへの給電は入力側が行った方が良いので改善した回路図を貼っておきます。
★追記 2023/12/03
プリント基板が届いたのでトランジスタ(Q2)のエミッタのパターンをカットして USB 側の Vcc に接続して実験しました。USB 側の Tx 信号が下図のように 3.5V 程度しかないためトランジスタ(Q2)が常にオン状態になってしまい PC ⇒ G850 の通信ができない状態でした。
対策として Q2 を下図のように NPN 型トランジスタに変更し、グランドを基準電圧にすることにします。
また、これ以外にポケコンを裏返したケースに入れて使う場合、今のシリアルのケースでは奥行き方向に長くてつかえてしまうという問題があることが判りました(私はポケコンを使用する時はケースに入れないので直ぐには気が付かなかった)。
上記の修正回路でサイズ変更もしてプリント基板化するかは考え中です。
★追記 2023/12/05
部品実装後の基板の写真も貼っておきます。トップ面にはピンヘッダのみの実装にしています。その他のパーツはボトム面に実装し、 SMD 実装面が片面なので部品実装作業が楽です。
ボトム面には SMD 部品とシリアルケーブル接続用のピンヘッダが実装されています。
結構小型に仕上がりましたね。でもUSB シリアル変換チップを実装し、かつもっと小さくできると思います。ちょっと気になるので設計してプリント基板化してみようかなぁ
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以前購入した手持ちの USB シリアルケーブル |
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このケーブルはかなり前に AliExpress さんで数百円で購入したものです。今使っている USB シリアル変換はポケコン購入時に作ったものでサイズも大きいし、丁度半田付けしてみたい気分だったので汎用基板と表面実装部品を使って小型のポケコン用シリアルケーブルを作ることにしました。
表面実装部品を使うのでハーフピッチの汎用基板を使う予定でしたが、ピンヘッダのピンが入らないことから 2.54 mm ピッチの通常の汎用基板を使うことになりました。
ネットではシャープ製ポケコンの周辺機器接続端子用のガイド付きピンヘッダを時々見かけますが、ガイド部分も3Dプリンタで自作します。
周辺機器接続端子用ピンヘッダのガイド部品 |
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表面実装部品以外で必要な部品は下図になります(写真のピンガイドは前のバージョンなので突起部分が短い)。このような細長い形状の基板のカットは億劫でしたが「ミニテーブルソーの購入」の記事で書いたミニテーブルソーがあるので気軽に基板をカットできるようになりました。
USB シリアルケーブル用部品(表面実装部品以外) |
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下図が最初に作った回路図です。トランジスタを使って送受信の信号を反転しています。ポケコン側の CTS はポケコンの RTS を折り返すようにしました。
最初に考えた回路図 |
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しかし、ポケコンに接続してみると、モニタのWコマンドでヘキサデータを保存しようとしてもまったく出力されない状態でした。
ポケコンのシリアル通信時の波形例をネットで探しましたが中々いい例が見つからなかったのでロジアナで確かめてみました。
ポケコンの周辺機器接続端子の信号をロジアナで観測したものが下図で CTS 信号を 10K の抵抗で Vcc に接続した瞬間にシリアルデータが出力されました。モニタから「W100,100」を実行した際の波形です。
ポケコン側の送信波形 |
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Wコマンドでのヘキサデータ送信時は送信のみなので RTS(送信要求) 信号がアクティブにならず、このために CTS(送信許可) 信号がアクティブにならないことが原因で送信できなかったことが判りました。これは flow 制御設定が"RS/CS"でも"none"でも同様でした。このため下図の回路のように CTS をシリアルケーブル側の Vcc にプルアップすることにしました。
この変更を行った後に PC-G850 と PC-G850V で確認した結果、問題無く送受信できるようになりました。
CTS 入力を修正した回路図 |
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待機時に SD, RD 共に low レベルなので消費電流を下げるという意味では下図のようにトランジスタを入れ替えた方がいいですね^^;
コレクタ抵抗も 10K に変更しました。配線し直そうかとも思いましたがピンヘッダのピン部分に直付けのトランジスタ等があるので止めましたw
低消費電流の回路 |
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配線した基板の写真も貼っておきます。フラッシュを焚いた写真では特に半田付けした基板が小汚く写ってしまいますが、裸眼で目視するともう少し綺麗ですw
「ワイヤリングペンの作成」の記事で書いた自作のワイヤリングペンを使ってウレタン線で配線しました。通常ピッチの汎用基板なのでトランジスタを傾けて半田付けしています。
作成した基板(ボトム) |
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下図は横から見た写真です。ピンヘッダのガイドもいい感じですね。ピンガイドの直下に半田付け箇所を作ってしまったのでガイドが少し浮いていますが、ガイド自体がかなりきつめなのでずれることは無いと思います。
作成した基板(サイド) |
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基板が完成したのでCADでケースを設計しました。ネジを使わないはめ込み式です。
ケース設計(CAD画面) |
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3Dプリンタで出力したケースに入れるとそれなりに見えますね。万が一、ケーブルを引っ掛けた時に直ぐ抜けるようにケーブルとの接続はピンヘッダに刺しただけにしておきました。
ケース格納後(その1) |
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ピン側と同様にピンの逆側も3Dプリンタのベッド面なのでツルツルしています。ポケコンの曲面に合わせた形状にするとカッコ良さそうですが、素朴な直方体型のデザインにしています。
ケース格納後(その2) |
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今回作成した USB シリアルケーブル部の拡大写真です。写真だと黒くて良く見えませんが想定通りコンパクトに仕上がりました。
シリアルケーブル部のズーム |
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増設メモリボード(EborsyEEP:右側)と今回作成したシリアルケーブル(左側)をポケコンに装着するとこのようになります。
ポケコンに装着したシリアルケーブル |
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★追記 2023/11/25
低消費電流化への配線変更を行っていないのでパターン設計してみました。プリント基板ではもう少し小さくできそうでしたがこれ以上小さくてもあまりメリットが無いこと及びケースをそのまま使いことから上記の汎用基板で作成したものと同じサイズにしました。
今回は汎用基板で作成したものをそのまま使う予定でしたが、プリント基板の製造が5百円程度でできるようになったので試作品からプリント基板化する人も多いようですね。
PCB パターン(両面:グランドベタ化前) |
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PCB パターン(トップ面) |
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PCB パターン(ボトム面) |
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★追記 2023/11/26
電源をオフしたまま接続した場合を考慮するとトランジスタへの給電は入力側が行った方が良いので改善した回路図を貼っておきます。
トランジスタへの給電部を改善した回路 |
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★追記 2023/12/03
プリント基板が届いたのでトランジスタ(Q2)のエミッタのパターンをカットして USB 側の Vcc に接続して実験しました。USB 側の Tx 信号が下図のように 3.5V 程度しかないためトランジスタ(Q2)が常にオン状態になってしまい PC ⇒ G850 の通信ができない状態でした。
USB 側のTx信号 |
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対策として Q2 を下図のように NPN 型トランジスタに変更し、グランドを基準電圧にすることにします。
対策後の回路 |
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また、これ以外にポケコンを裏返したケースに入れて使う場合、今のシリアルのケースでは奥行き方向に長くてつかえてしまうという問題があることが判りました(私はポケコンを使用する時はケースに入れないので直ぐには気が付かなかった)。
上記の修正回路でサイズ変更もしてプリント基板化するかは考え中です。
★追記 2023/12/05
部品実装後の基板の写真も貼っておきます。トップ面にはピンヘッダのみの実装にしています。その他のパーツはボトム面に実装し、 SMD 実装面が片面なので部品実装作業が楽です。
部品実装後の基板(トップ面) |
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ボトム面には SMD 部品とシリアルケーブル接続用のピンヘッダが実装されています。
部品実装後の基板(ボトム面) |
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結構小型に仕上がりましたね。でもUSB シリアル変換チップを実装し、かつもっと小さくできると思います。ちょっと気になるので設計してプリント基板化してみようかなぁ
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