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SuperSimpleController(その15)逆ポーランド記法 [OriginalCPU]

 前回の記事で書いたようにモニタプログラムができ、パソコン側で開発したアプリケーションのロードも容易になったので2バイト整数の演算処理を作ってみました。

 今回開発した8bit CPU(Simple8Z)はハードウェアを最小化(13チップ構成)するためにハードリソースも必要最小限に近い構成なので2バイト演算をレジスタのみではできず、Z-80等に比べるとコード効率が2倍以上悪くなります。

 今回作成した2バイト整数の四則演算処理のアセンブラソースを貼っておきます。
 乗算と除算の処理内容としては10進数の場合に筆算で行う処理と同様なロジックで作成しています。0除算の場合はキャリーフラグを立てるようにしました。

2バイト整数の四則演算処理(Simple8Z用アセンブリ言語)
; Addition ; Para1 <- Para1 + Para2 AddW: RD_R0 Para2 LD_R1_R0 RD_R0 Para1 ADD_R0_R1 WR_R0 Para1 RD_R0 <Para2 + 1> LD_R1_R0 RD_R0 <Para1 + 1> ADC_R0_R1 WR_R0 <Para1 + 1> RET ; subtraction ; Para1 <- Para1 - Para2 SubW: RD_R0 Para2 LD_R1_R0 RD_R0 Para1 SUB_R0_R1 WR_R0 Para1 RD_R0 <Para2 + 1> LD_R1_R0 RD_R0 <Para1 + 1> SBC_R0_R1 WR_R0 <Para1 + 1> RET ; Absolute value ; Para1 <- abs(Para1) AbsW: RD_R0 <Para1 + 1> ; get high byte CKMSBR0 ; check MSB of R0 JNC AbsW90 ; if plus NegW: RD_R0 Para1 LD_R1_R0 CLR_R0 SUB_R0_R1 WR_R0 Para1 RD_R0 <Para1 + 1> LD_R1_R0 CLR_R0 SBC_R0_R1 WR_R0 <Para1 + 1> AbsW90: RET ; multiplication ; Para1 <- Para1 x Para2 MulW: RD_R0 Para1 WR_R0 CalTmp RD_R0 <Para1 + 1> WR_R0 <CalTmp + 1> CLR_R0 WR_R0 Para1 WR_R0 <Para1 + 1> LD_R0 16 WR_R0 CalCnt ; set loop counter MulWLp: RD_R0 <CalTmp + 1> SHR_R0 WR_R0 <CalTmp + 1> RD_R0 CalTmp SHRC_R0 WR_R0 CalTmp JNC MulW10 CALL AddW MulW10: RD_R0 Para2 ; Para2 <- Para2 * 2 SHL_R0 WR_R0 Para2 RD_R0 <Para2 + 1> SHLC_R0 WR_R0 <Para2 + 1> RD_R0 CalCnt DEC_R0 WR_R0 CalCnt JNZ MulWLp RET ; division ; Para1 <- Para1 / Para2 ; Para1 -> division ; CalMod -> modulo ; Cy -> 1:error DivW: RD_R0 Para2 LD_R1_R0 RD_R0 <Para2 + 1> OR_R0_R1 JZ DivErr CLR_R0 WR_R0 CalMod WR_R0 <CalMod + 1> LD_R0 16 WR_R0 CalCnt DivWLp: RD_R0 Para1 ; (CalMod : Para1) << 1 SHL_R0 WR_R0 Para1 RD_R0 <Para1 + 1> SHLC_R0 WR_R0 <Para1 + 1> RD_R0 CalMod SHLC_R0 WR_R0 CalMod RD_R0 <CalMod + 1> SHLC_R0 WR_R0 <CalMod + 1> RD_R0 <Para2 + 1> LD_R1_R0 RD_R0 <CalMod + 1> CP_R0_R1 JC DivW20 JNZ DivW10 RD_R0 Para2 LD_R1_R0 RD_R0 CalMod CP_R0_R1 JC DivW20 DivW10: RD_R0 Para2 ; CalMod <- CalMod - Para2 LD_R1_R0 RD_R0 CalMod SUB_R0_R1 WR_R0 CalMod RD_R0 <Para2 + 1> LD_R1_R0 RD_R0 <CalMod + 1> SBC_R0_R1 WR_R0 <CalMod + 1> RD_R0 Para1 ; Para1 <- Para1 + 1 INC_R0 WR_R0 Para1 ; always no Cy DivW20: RD_R0 CalCnt DEC_R0 WR_R0 CalCnt JNZ DivWLp RET DivErr: CKZR1 ; set Cy RET

★追記 2021/04/30
 AbsWとNegWを追加
★追記 2021/04/28
 乗算処理内で加算処理をコールしているので加算と減算処理のソースを追加
★変更 2021/04/27
 除算処理で商を直接Para1に設定するようにしてコード短縮&高速化

 乗算処理ができるようになったのでこれを使って10進数の文字列のバイナリ変換が作れます。また、除算処理を使ってバイナリをアスキー文字に変換する処理も作れます。

 作成したバイナリと10進アスキー文字列の相互変換と演算処理の動作確認をするために電卓のように自由に演算対象の数値を変更して演算できる環境が欲しくなります。

 演算子を使った一般的な数式を評価する処理を作成するのは少々面倒なので、割合簡単に作成できるスタックを使用した逆ポーランド記法(RPN)の数式を処理する環境を作ってみました。

 下図が作成した整数型RPN電卓の操作例です。下記の操作を行っています。最後に実行しているRPN式はウィキペディアに記載されているものです。
  1. EEPROM内のHexローダーを起動
  2. モニタプログラムのHexファイルをロードし、自動起動
  3. モニタのヘルプ表示
  4. r(Hexリード)コマンド実行
  5. RPN電卓のHexファイルをロード
  6. RPN電卓を起動
  7. RPN電卓のヘルプ表示(dupはスタックトップを複製するコマンド)
  8. 1から10までの合計値を計算
  9. 111の二乗を計算
  10. 1000/6を計算
  11. サンプルのRPN式の評価結果を10進と16進で表示

RPN電卓操作例


★変更 2021/05/05
 マイナス値の乗算例を追加
★変更 2021/04/28
 除算例を追加


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SuperSimpleController(その14)モニタの制作2 [OriginalCPU]

 前回の記事でプリント基板化した自作CPU(Simple8Z)にシリアルインターフェースを接続してモニタプログラムを作成中であることを書きました。
 今回はオレオレマシン語で記述したモニタプログラムが完成したのでモニタ機能の概要と対処した代表的な問題について書いてみます。

 下の写真はシリアルI/Fを接続した状態の様子です(3Dプリンタで出力したスペーサーの足を付けました)

シリアルI/Fを接続したSimple8Z



 今回作成したオリジナルのCPUはハードウェアの構成を最小化(結果として13チップ構成)するため、CPUリソースも必要最小限に近いため、レジスタは2個しかなく、ジャンプ命令等で特定のレジスタが破壊されるというよう環境であり、Z80のマシン語が高級言語に感じるほどですw

 今回自作したCPUである程度の規模のプログラムを作成するのは初めてなので特定の条件で発生するような想定外の問題が発生し、対処のためにマイクロコードの修正も並行して行いました。
 更にマイクロコードでは対応不可能な問題も発生し、GAL内のロジックも変更(詳細は後述)しています。

 その結果、モニタプログラム完成時には、動作が非常に安定しました(もう未発見の問題が残っていないことを祈りたい)

 モニタの操作ログ例を下記に貼りました。操作内容は
  • ROMに焼いたhexローダーを起動
  • モニタのhexファイルをロード後、自動起動
  • ヘルプ表示
  • IN/OUTコマンドを実行(シリアルIC(MC68B50)のステータス入力とデータポートへの41H出力)
  • メモリセットコマンド実行
  • メモリダンプコマンドの実行
  • モニタ試験プログラム(hello表示とエコーバック)のロード
  • メモリダンプコマンドの実行
  • モニタ試験プログラムの実行
です。

モニタ操作のサンプルログ
HexLoader Start 000000000000000000000000000000000000000000000001 exec SimonZ(monitor for Simple8Z) by skyriver V0.01 2021/04/15 ]h DUMP: D[aaaa[,aaaa]] FILL: Faaaa,aaaa,dd GO : Gaaaa SET : Saaaa IN : Iaa OUT : Oaa,dd READ: R HELP: H ]ic0 02 ]oc1 41 A] ? ]sa000 A000:C1 - 1 A001:82 - 2 A002:03 - 3 A003:04 - 4 A004:A2 - - A003:04 - - A002:03 - . ]d8008 801c 8000 : - 06 FE 10 60 50 0A FE 10 8010 : E0 50 09 FE 50 0D FE 10 - 00 B0 B0 84 B0 ]da000 A000 : 01 02 03 04 A2 E2 EA EA - 6C 55 72 75 04 45 15 5F A010 : 2E B9 AB 90 E3 AA B0 AA - 79 96 5F 4D 59 55 11 94 A020 : A8 BB 0F 22 0B BE 8B E1 - FA 1C 52 34 54 55 45 45 A030 : C8 EA 2A 0E 0A 8E 28 AF - D9 71 90 58 45 9B 23 74 A040 : AC B2 00 02 E4 EA C2 A9 - 55 3F 67 5C 67 45 01 41 A050 : AB 5F AA 2A 48 0D FE 9A - 75 FF 45 CF 74 DD 79 E7 A060 : A1 FB C8 7F 2B AA BE DB - 91 DE 51 7D 94 5E C7 85 A070 : 8E 0E C2 B6 F8 E8 AA 8B - 70 54 55 50 27 D1 54 55 ]r 0001 ]da000 A000 : 10 39 50 48 A0 60 48 A0 - 3D 50 48 A0 80 A0 4F 2F A010 : C2 18 A0 B0 2D A0 C0 04 - A0 98 C0 3A C5 18 A0 98 A020 : C1 18 0D 4E C2 2C A0 B0 - 2D A0 C0 18 A0 E0 40 98 A030 : C0 3A 3A 2F C5 2D A0 90 - C1 E0 48 65 6C 6C 6F 2C A040 : 77 6F 72 6C 64 0D 0A 00 - 00 3F 67 5C 67 45 01 41 A050 : AB 5F AA 2A 48 0D FE 9A - 75 FF 45 CF 74 DD 79 E7 A060 : A1 FB C8 7F 2B AA BE DB - 91 DE 51 7D 94 5E C7 85 A070 : 8E 0E C2 B6 F8 E8 AA 8B - 70 54 55 50 27 D1 54 55 ]ga000 Hello,world echo back test is OK!! :) ]


 次にGALの修正まで必要だった問題についてメモしておきます。
 GAL内のロジックとマイクロコードの内容を把握していないと判り辛いと思いますが自分へのメモという意味もあります。
  • 問題内容
     R0レジスタをメモリに保存するWR_R0 aaaaにおいて最後の3バイト目のメモリ上のアドレスの下位が0FFHの場合、PCL(74AS867)のTCO(上位へのキャリア信号)がアクティブになり、PCHがインクリメントされることでPCの値がズレてしまう。

  • 対処
     GAL内のPCLからPCHへのキャリ生成ロジックに下記の青色部分を追加し、上記問題時にはPHWが生成されないようにした(RCO:PCLのRCO、OPHW:PCHへのライト信号)。マイクロコードにもPWEN信号の制御を追加した。
     また、水平展開としてRD_R0 aaaaでも同様の問題が発生するはずなので同じ対処を行った。

     QRCO.d = RCO;
     append OPHW = !RCO & QRCO & PWEN;

 下図は対処後のロジアナ画面例で"A1"カーソルから"A2"までがWR_R0命令の実行区間です。
"A1"カーソルの右側での最初の06:QRCO/のアクティブパルスでPHW/が発生されず、"A2"カーソル部の06:QRCO/のアクティブパルス(PC値がxxFFの状態でPCLをインクリメント)に対してはPHW/が生成されていることが判ります。

GALで対処後のロジアナ画面例



★追記 2021/04/18
 上記ロジアナ画面のデータ採取時に実行したプログラムを追記します。 {

WR_R0命令問題再現プログラム
;++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ; 100H prob test ; by skyriver ; V0.01 2021/04/15 ;++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ .list 0001 ROM EQU 1 ifdef ROM 01FB START EQU 01FBH else START EQU 90FBH endif 0000' ASEG ifdef ROM ORG 0000H JP START ; 12(9) 0000 C0 + DB 0C0H 0001 01FA + DW (START) - 1 ; because increment PC after set PC endif ORG START AND 0FF00H HALT 0100 FF + DB 0FFH ORG START LD_R0 23H ; 16(4) 01FB 10 + DB 10H 01FC 23 + DB 23H WR_R0 TMP ; 28(12) 01FD 50 + DB 50H 01FE 8010 + DW TMP LD_R0 34H ; 32(4) 0200 10 + DB 10H 0201 34 + DB 34H RD_R0 TMP ; 43(11) 0202 60 + DB 60H 0203 8010 + DW TMP HALT ; 45(2) 0205 FF + DB 0FFH ORG 8010H 8010 TMP: DS 1 END

}


 YouTubeにもSimple8Zの状況をアップしたので貼っておきます。
 冒頭部分の"consists of 16 ICs"の16は13のtypoです^^;

https://www.youtube.com/watch?v=LzoIbzHgR4k



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SuperSimpleController(その13)モニタの制作 [OriginalCPU]

 前回の記事で書いたように自作CPUのプリント基板(下の写真)ができたので今回はモニタの制作について少し書いてみます。

プリント基板化したSimple8Z



 始めにシリアル通信ができるように手持ちの調歩同期シリアル通信用IC(MC68B50)を載せたシリアルアダプタを汎用基板(秋月さんの両面スルホールCタイプ)を使って作成しました。
 Simple8Zの拡張用コネクタからはI/Oアクセス時にアクティブ(lowアクティブ)になるIOR/信号を出していますが、MC68C50のE信号(イネーブル信号)はhighアクティブなのでトランジスタを使ってIOR/を反転して接続しています。
 また、PIC12F683でシリアル通信用クロック(9600x16)を生成しています。
 具体的な回路図は「SuperSimpleController(その10)I/O命令追加」の記事を参照してください。

シリアルアダプタ(部品面)



シリアルアダプタ(半田面)



 下の写真はSimple8Z本体に今回作成したシリアルアダプタを接続した状態のものです。
 マシン語のディバッグもさることながら、今回の様にある程度まとまった処理を実行すると以前の1パス試験では出現しなかった問題が発生するのでマイクロコードも修正しつつの作業になります。
 ICソケットを痛めないようにuCODE用のROMにもゼロプレッシャーソケットを付けました。

Simple8Z with serial adapter



 まだ作成途中で部分的にしかコマンドを実装していませんが、Hexローダーでモニタをロードし、動かしているサンプル画面が下図になります。ディバッグのために1MHzの外部クロックで動かしています。

 もうどこから見てもCPUそのものではありませんか?

モニタロードと操作のサンプル画面



 モニタ内のHexロード機能('R'コマンド)、ダンプ及び実行コマンドの試験のために作成したHello表示とエコーバックを行う試験用プログラムのソースも貼っておきます。

モニタ試験用Hello&Echo back試験プログラム(Simple8Z用アセンブリ言語)
;++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ; Simle8Z Hello & echo back test ; by skyriver ; V0.01 2021/04/08 ;++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ .xlist include machine.inc .list START EQU 0A000H ; program start address SIO_CMD EQU 0C0H SIO_DAT EQU SIO_CMD + 1 ASEG ORG START LD_R0 <(LOW MSG) - 1> WR_R0 saveR0 LOOP: RD_R0 saveR0 INC_R0 WR_R0 saveR0 RD_R1_R0 <HIGH MSG> CKZR1 LD_R0_R1 JZ ECHO CALL PUTC JP LOOP ECHO: IN_R0 SIO_CMD SHR_R0 JNC ECHO IN_R0 SIO_DAT LD_R1 13 CP_R0_R1 JZ ECHOEN CALL PUTC JP ECHO ECHOEN: RET ; output character to SIO ; R0 <- data ; PUTC: LDF_R1_R0 IN_R0 SIO_CMD SHR_R0 SHR_R0 LD_R0_R1 JNC PUTC ; if tx not ready OUT_R0 SIO_DAT RET MSG: DB "Hello,world", 13,10,0 saveR0: DS 1 END


★追記 2021/04/09
 Twitterにポストした動画付きコメントを貼っておきます。
 EEPROMに書いたHexローダーでモニタをロード&起動後に上記の試験用プログラムのヘキサファイルをモニタの'R'コマンドでロードしてから'G'コマンドで実行しています。




★追記 2021/04/12
 最初はI2Cロガーの時のようにシリアルアダプタをCNCを使って片面基板で作成しようと考えていましたが、片面基板ではピンヘッダの固定力が弱く、抜き差しする際にピンが動きパターンが剥がれる恐れがあるので上述のように両面スルホールの汎用基板を使い手配線で作成することにしました。
 CNCでの作成用にパターン設計等はしていたので貼っておきます。
 トランジスタでIOR/信号を反転してMC68B50のE信号として入力していますが、立上りタイミングが2us程度遅れたので下記のパターン図にはないですが、ベース抵抗にパラでスピードアップコンデンサとして220pFを追加(遅延は0.3us程度に改善)しています。

片面基板パターン設計



 CNCでパターン切削から穴開け、外周切取りまで行いますが、パターン切削時のCNC制御画面が下図です。

CNCでのパターン切削画面




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