光造形式3Dプリンタの購入(その3)造形の精度 [LCD3D_Printer]
前回の「光造形式3Dプリンタの購入(その2)インフィル方法」の最後の方で書いたように造形物のボトムレイヤが他のレイヤより薄くなるということなので評価してみました。
精度に関してはレジンの種類、環境温度や設定パラメータにも依存すると思います。
今回の評価で使用したレジンはELEGOO Standard Resin Clear Greenで環境温度は23℃です。
設定パラメータは下記のように標準設定のままです。
尚、使用した3Dプリンタは ELEGOO MARS UV です。
評価用として下記のオブジェクトを作成しました。
写真のように綺麗に出力されました。
まず、外観で気になることが1点あり、下の写真のようにビルドプレートに固着している部分をよく見ると左上の部分(一番高い部分のボトム部)がプレートから浮いた痕跡があります。
上位レイヤが少ない他の部分ではしっかりプレートに固着していたようですが、ベタの上位レイヤが多い場合、上位レイヤが硬化する際に収縮するのでプレートから剥がす応力が加わるためと思います。
印刷終了時にプレートから剥がす際にはかなり堅固に固着していたので造形中に落下する心配はかなり少ないのですが造形物の精度に関しては悪影響がでるものと思います。
他の出力物でも下の写真のように同様の現象が出ているものがあります。
上記の「評価用オブジェクト出力結果」で横方向をX軸、縦方向をY軸、上方向をZ軸とし、ボトム面の最も広いレイヤをレイヤ1、最も高いレイヤをレイヤ10とします。レイヤ10の直下のボトム面の位置をX,Yの原点とします。(ここでのレイヤはスライサーが生成するレイヤとは異なります)
尚、プレート上での実際の出力位置は下図の場所です。
測定はノギスのデプスバー部を用いてレイヤーの高さを直に測定しています。測定精度は0.05mm程度です(ノギス自体の精度は0.025mmですが当て方により変化する場合があるので測定精度は低くなります・・複数回計って平均を取るなどすれば精度が上がりますが)。
最初に原点位置でのレイヤ10の高さは 9.70mm で0.30mm短くなっていました。
これは前述のようにボトム面がプレートから浮いたためにボトム面の上昇分、短くなったものと思います。
Y=0の位置での各レイヤの高さは
X=0の位置での各レイヤの高さは
次に各レイヤの幅をノギスのジョウ部で測定しました(測定精度は0.05mm程度)
Y=0の位置での各レイヤの幅は下記の通りでした。但し、レイヤ1に関してはノギスを底面に対して垂直に当てた場合、20.20mmでこれは紫外線の照射時間が長いボトムレイヤが若干太っているためだと推測します。
X=0の位置での各レイヤの幅は下記の通りで上記のY=0の結果と同様でした。
【まとめ】
★2020/03/23 追記 {
amazonのレビューを見ていたら「出力物のサイズが異なる問題があり、スライサー(ChituBox)でのプリンタ設定でビルドプレートのサイズが違っていたので本来のサイズ(X68Y120Z155mm)に設定し直したらきちんと出力されるようになった」というようなコメントを見かけました。
設定を確認したところ、下図のようになっていました。
出力済みの長めの造形物(設計値:102.4mm)を実測したところ102.6mmでした。
設定値を小さくすれば1cm当たりのドット数が増えて出力物が大きくなる(設定値と出力サイズは反比例)はずなので120に変更した場合の出力サイズは
102.6x120.96/120 = 103.4208mm
になると予想されます。このことから現状値のままで変更なしで行こうと思います。
}
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精度に関してはレジンの種類、環境温度や設定パラメータにも依存すると思います。
今回の評価で使用したレジンはELEGOO Standard Resin Clear Greenで環境温度は23℃です。
設定パラメータは下記のように標準設定のままです。
Parameter | value |
---|---|
Leyer Height | 0.05 mm |
Bottom Layer Count | 5 |
Expose Time | 8 sec |
Bottom Exposure Time | 60 sec |
Light-off Delay | 0 sec |
Bottom Light-off Delay | 0 sec |
尚、使用した3Dプリンタは ELEGOO MARS UV です。
評価用として下記のオブジェクトを作成しました。
評価用オブジェクト |
|
写真のように綺麗に出力されました。
評価用オブジェクト出力結果 |
|
まず、外観で気になることが1点あり、下の写真のようにビルドプレートに固着している部分をよく見ると左上の部分(一番高い部分のボトム部)がプレートから浮いた痕跡があります。
上位レイヤが少ない他の部分ではしっかりプレートに固着していたようですが、ベタの上位レイヤが多い場合、上位レイヤが硬化する際に収縮するのでプレートから剥がす応力が加わるためと思います。
印刷終了時にプレートから剥がす際にはかなり堅固に固着していたので造形中に落下する心配はかなり少ないのですが造形物の精度に関しては悪影響がでるものと思います。
オブジェクトの底面 |
|
他の出力物でも下の写真のように同様の現象が出ているものがあります。
他の出力物のボトムレイヤ |
|
上記の「評価用オブジェクト出力結果」で横方向をX軸、縦方向をY軸、上方向をZ軸とし、ボトム面の最も広いレイヤをレイヤ1、最も高いレイヤをレイヤ10とします。レイヤ10の直下のボトム面の位置をX,Yの原点とします。(ここでのレイヤはスライサーが生成するレイヤとは異なります)
尚、プレート上での実際の出力位置は下図の場所です。
出力物のプレート上の位置 |
|
測定はノギスのデプスバー部を用いてレイヤーの高さを直に測定しています。測定精度は0.05mm程度です(ノギス自体の精度は0.025mmですが当て方により変化する場合があるので測定精度は低くなります・・複数回計って平均を取るなどすれば精度が上がりますが)。
最初に原点位置でのレイヤ10の高さは 9.70mm で0.30mm短くなっていました。
これは前述のようにボトム面がプレートから浮いたためにボトム面の上昇分、短くなったものと思います。
Y=0の位置での各レイヤの高さは
Layer No. | Layer Hight[mm] | error[mm] |
---|---|---|
1 | 1.15 | +0.15 |
2 | 0.95 | -0.05 |
3 | 0.95 | -0.05 |
4 | 1.00 | 0.00 |
5 | 1.00 | 0.00 |
6 | 1.00 | 0.00 |
7 | 0.95 | -0.05 |
8 | 0.95 | -0.05 |
9 | 1.00 | 0.00 |
10 | 1.00 | 0.00 |
X=0の位置での各レイヤの高さは
Layer No. | Layer Hight[mm] | error[mm] |
---|---|---|
1 | 1.15 | +0.15 |
2 | 0.95 | -0.05 |
3 | 0.95 | -0.05 |
4 | 1.00 | 0.00 |
5 | 1.00 | 0.00 |
6 | 1.00 | 0.00 |
7 | 1.00 | 0.00 |
8 | 1.00 | 0.00 |
9 | 1.00 | 0.00 |
10 | 1.00 | 0.00 |
次に各レイヤの幅をノギスのジョウ部で測定しました(測定精度は0.05mm程度)
Y=0の位置での各レイヤの幅は下記の通りでした。但し、レイヤ1に関してはノギスを底面に対して垂直に当てた場合、20.20mmでこれは紫外線の照射時間が長いボトムレイヤが若干太っているためだと推測します。
Layer No. | Layer Width[mm] | error[mm] |
---|---|---|
1 | 20.15 | +0.15 |
2 | 18.10 | +0.10 |
3 | 16.10 | +0.10 |
4 | 14.10 | +0.10 |
5 | 12.10 | +0.10 |
6 | 10.10 | +0.10 |
7 | 8.10 | +0.10 |
8 | 6.10 | +0.10 |
9 | 4.10 | +0.10 |
10 | 2.10 | +0.10 |
X=0の位置での各レイヤの幅は下記の通りで上記のY=0の結果と同様でした。
Layer No. | Layer Width[mm] | error[mm] |
---|---|---|
1 | 20.15 | +0.15 |
2 | 18.10 | +0.10 |
3 | 16.10 | +0.10 |
4 | 14.10 | +0.10 |
5 | 12.10 | +0.10 |
6 | 10.10 | +0.10 |
7 | 8.10 | +0.10 |
8 | 6.10 | +0.10 |
9 | 4.10 | +0.10 |
10 | 2.10 | +0.10 |
【まとめ】
- Z軸方向
レイヤ1(ボトム面)が+0.15程度厚くなっている以外は測定誤差範囲内と言えるのではないでしょうか?
前回の記事の最後の方に書いたようにネット情報ではボトムレイヤが他より短くなる問題があるとのことでしたが、今回実測した結果は逆にボトムが若干長く(厚く)なっていました。
今回使用した3Dプリンタ(ELEGOO MARS)には少なくとも3世代くらいのバージョンがあるようなので最近のものは改善された可能性もあります。
また、冒頭で述べたプレートからの浮きがある箇所では底面からレイヤ10までの厚さが設計値と比較し-0.30mmとなっています(実際にはレイヤ10の高さは問題ないがボトム面が0.3mm浮き上がっている形状になっていると思われる)
- X-Y軸方向
X軸とY軸は同じ測定結果になり、レイヤ1が+0.15mm、レイヤ2~10が+0.10mmという結果になりました。
レイヤ1に含まれるスライサーのボトムレイヤ部では更に0.05mm太くなっているようでした。
SLA方式の3Dプリンタでは一般的に紫外線の照射時間が長いと硬化するレジンの範囲が広がることで造形物が大きくなる傾向があります。更に、スライサーでのボトムレイヤは紫外線の照射時間が長いので2次硬化時の伸縮が他のレイヤより小さいことやそもそもプレートに固着しているので上位層からの応力に耐えて収縮しにくいこと等が原因でレイヤ1が他のレイヤより若干大きめになったものと考えられます。
今後は高精度が必要な造形物に関しては側面部分が0.05mm(=0.10mm/2)程度大きくなることを考慮して設計するようにしたいと思います(レジンや環境温度等が変われば変化する可能性はあります)
★2020/03/23 追記 {
amazonのレビューを見ていたら「出力物のサイズが異なる問題があり、スライサー(ChituBox)でのプリンタ設定でビルドプレートのサイズが違っていたので本来のサイズ(X68Y120Z155mm)に設定し直したらきちんと出力されるようになった」というようなコメントを見かけました。
設定を確認したところ、下図のようになっていました。
出力済みの長めの造形物(設計値:102.4mm)を実測したところ102.6mmでした。
設定値を小さくすれば1cm当たりのドット数が増えて出力物が大きくなる(設定値と出力サイズは反比例)はずなので120に変更した場合の出力サイズは
102.6x120.96/120 = 103.4208mm
になると予想されます。このことから現状値のままで変更なしで行こうと思います。
ChituBOXでのプリンタ関連の設定値 |
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