レトロマイコンZ80ボードの構想(その3)TQFP変換基板の作成 [Z80]
前回の「レトロマイコンZ80ボードの構想(その2)」の記事の最後の方で書いたように PIC24FJ64GA004 を使う予定ですが基板を作成する前にブレッドボードで試したいので TQFP を DIP に変換する基板を作成しました。
回路図といってもTQFPとDIPの対応するピンを結線するだけですが、DesignSparkPCB を使って回路図作成とパターン設計をしています。
回路図は下図で今回初めて DesignSparkPCB のバス描画機能を使ってみました。
TQFPサイズのPIC24FJ64GA004と44ピン DIPソケットのフットプリントと回路シンボルデータは今回自作しています(探せばどこかにあるんだろうけど)。
回路図と言っても単純な結線なので文字サイズ等、見易いようにするための調整はしていません。
基板サイズを小型化するため、TQFP を45°回転して実装しました。
回路図はいいとしてこのような単純な結線でもパターン作成は自動ではうまく行きません。自動ルーティングは基本的にX-Y軸でパターンを引いていくので、基板全体を45°回転してパターン密度の高い TQFPパッケージが傾かないようにしましたが自動ルーティングでは下図左側のように斜めのパターンは引かないので予想通り途中で行き詰り、未結線部分が発生してしまいます。
このような部分は人工知能を使って人間よりうまくルーティングして欲しいものです(言うのは簡単だけどw)。
というのは冗談で使用制限無しで自動ルーティング機能までついていることに感謝です。
下図右側が手動でパターンを引いたものです。
パターン設計が完了したら、ガーバーファイルに出力して FlatCAM で CNCルータ用のNCファイルを作成します。
使用した基板は厚さ 1.6mm の片面ベークライトです。
綺麗に仕上げるためと発生音を抑えるためにfeed速度等、全体的に遅めにしています。
また、パターン作成時に使用したエンドミルは直径 0.1mm のピラミッドタイプのものですが実際の削り幅はエンドミルのZ位置にも依存するので設定上は 0.2mm としています。
アウトラインでの基板切り出しの際は流石に夜はできないくらい音がするので昼に作業しました。音の大きさは基板の固定方法にもよるなぁ~と思ったので次回からは消音観点も入れた基板固定方法にしたいと思います。
NCファイル作成のために FlatCAM で設定した主要な項目の値は次のとおりです。
NCファイルを作成後はCNCルーターでの基板加工ですね。
プリント基板作成は「両面プリント基板の制作実験(その7)オブラート転写方式」の記事で書いたオブラート転写方式の方が細かいパターンまで対応できますが、今回のものであれば「CNCルータでの両面基板制作(その2) Via処理と基板制作」の記事で書いた手法でCNCルーターでも対応でます。
CNCルーターを使った方がエッチングも不要だし、片面であればCNC側の作業を連続してできるので基板の再取付時の位置合せも不要で作業が簡単になります(エッチングする場合でも穴開けや基板切り出しにCNCを使います)。
パターン作成中の grblControlの画面表示が下図です。
パターン作成中のCNCルーターの様子が下の写真です。
手前にある部分的なパターンは調整時の(というか失敗したw)ものです。
パターンの次は穴開けです。
穴開け時のgrblControlの画面表示は次のようになります。
CNCでの作業の最後が基板切り出しです。
画面は次のとおり。
CNCでの作業中はほとんどが待つだけの状態で楽(特に穴開け作業)です。
今回はベークライト基板なのでガラエポ基板よりは難易度が低いです。
CNC1610での基板作成を説明しているYouTube動画でガラエポは(硬いので)使わないと説明しているものもありました。
次はソルダーレジスト処理ですね。
処理方法は「両面プリント基板の制作実験(その7)オブラート転写方式」の記事の最後の方に書いている方法と同じです。
結果は次の写真です。
おまけで FlatCAM で変換した NCファイルをレーザーカッターで読込んでシルク処理もどきをやってみました。
レーザーカッターで刻印した後、シルバーのマジックで刻印部分を塗った後、アルコールを染み込ませたティッシュで余分なインクを拭き取りました。
位置が少しずれているのとレーザーで焦げた黒い粉をきれいに拭きとってからマジックを塗った方が良かったかなぁ(刻印文字に見えにくい)というのが今回の反省点であり、今後の課題です。
最後に PIC24FJ64GA004 チップをクリーム半田とホットガンを使って半田付け後、ピンヘッダを半田付けし、TQFPからDIPへの変換が完了です。^^
★2018/01/15 追記 {
PIC24FJ64GA004 を今回作成した変換基板に半田付けした状態で端子間が短絡していないかチェック済みで問題ない状態ですが、切削した基板のパターン写真を拡大してよく見るとTQFPの端子間に切削対象外のベタパターンが細く残っています。
この細いパターンに PIC24FJ64GA004 の複数の端子が接続状態になった場合、相互に導通することになります。
切削対象外のベタパターン部を意図的に DesignSparkPCB で cupperのベタパターン化すればベタパターン部の輪郭部分も切削されるので今回のような切削対象外の細いパターンは他の広いベタパターンから分離された状態になるはずです。
今、DesignSparkPCB で確認してみたら信号を割り振らなくてもベタパターンは作れるみたいなので今後はベタパターンも意図的に作って置いた方が良さそうです(切削時間はかかるけど・・)。
}
★2018/01/18 追記 {
上記の追記ではベタパターン追加で TQFP のピン間ショート対策と書きましたが、本質的な対策ではなかったと思い、考え直しました。
ピンのフットプリントの問題ならフットプリントで対策すべきではないかと・・
ということでピンのフットプリントの幅を若干大きくしてピン間に不要なパターンが入らないようにしました。
また、外側のDIPのフットプリントも幅を小さくしてスリム化しました。
レーザーカッターでのシルク印刷内容を刻印する際の位置ずれ対策として変換基板の外側に枠を追加したので、レーザーカッターで刻印する際の位置合せ時、固定した紙等に刻印後、枠を目印に位置決めすることで刻印ずれ対策にします。
ぱっと見、違いが判りにくいですが、改善パターンの図を下に示します。
}
★2018/01/20 追記 {
改善パターンをCNCで切削してみました。
TQFP のピン間に残パターンは残っていません。でもその先の部分に細いパターンがあり、最悪ショートする可能性もあるのでやはり 上の1/15の追記のように DesignSparkPCB でベタパターンを作り、ベタパターンの周辺の輪郭も milling した方が安全そうです。(ソルダーレジスト処理すればショートの危険性はかなり少なくなるとは思うけど)
今回はホールにピンヘッダを通し易いように 0.8mm のエンドミルで穴開けを行い、そのまま、0.8mm のエンドミルでアウトラインの切出しを行いました。
ホールサイズが大きめですが流石にCNCではど真ん中に穴が開いています(手作業では到底こうはいきません)。
下の写真はパターンが見易いようにわざと反射する状態で撮ってみました。
}
★追記 2023/12/24 {
「リバーシブルなDIP変換基板」の記事に TQFP 44 ピンを DIP 44 ピンに変換するプリント基板の製作について書きました。
}
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回路図といってもTQFPとDIPの対応するピンを結線するだけですが、DesignSparkPCB を使って回路図作成とパターン設計をしています。
回路図は下図で今回初めて DesignSparkPCB のバス描画機能を使ってみました。
TQFPサイズのPIC24FJ64GA004と44ピン DIPソケットのフットプリントと回路シンボルデータは今回自作しています(探せばどこかにあるんだろうけど)。
回路図と言っても単純な結線なので文字サイズ等、見易いようにするための調整はしていません。
TQFP->DIP変換回路 |
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基板サイズを小型化するため、TQFP を45°回転して実装しました。
回路図はいいとしてこのような単純な結線でもパターン作成は自動ではうまく行きません。自動ルーティングは基本的にX-Y軸でパターンを引いていくので、基板全体を45°回転してパターン密度の高い TQFPパッケージが傾かないようにしましたが自動ルーティングでは下図左側のように斜めのパターンは引かないので予想通り途中で行き詰り、未結線部分が発生してしまいます。
このような部分は人工知能を使って人間よりうまくルーティングして欲しいものです(言うのは簡単だけどw)。
というのは冗談で使用制限無しで自動ルーティング機能までついていることに感謝です。
下図右側が手動でパターンを引いたものです。
パターン図(自動ルーティング) | パターン図(手動ルーティング) |
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パターン設計が完了したら、ガーバーファイルに出力して FlatCAM で CNCルータ用のNCファイルを作成します。
使用した基板は厚さ 1.6mm の片面ベークライトです。
綺麗に仕上げるためと発生音を抑えるためにfeed速度等、全体的に遅めにしています。
また、パターン作成時に使用したエンドミルは直径 0.1mm のピラミッドタイプのものですが実際の削り幅はエンドミルのZ位置にも依存するので設定上は 0.2mm としています。
アウトラインでの基板切り出しの際は流石に夜はできないくらい音がするので昼に作業しました。音の大きさは基板の固定方法にもよるなぁ~と思ったので次回からは消音観点も入れた基板固定方法にしたいと思います。
NCファイル作成のために FlatCAM で設定した主要な項目の値は次のとおりです。
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回路パターン
- isolate
- Tool Dia : 0.2
- Width : 1
- Pass overlap : 0.15
- Conbine Passes : no checked
- Generation
- CutZ : -0.06
- Travel : 2.5
- FeedRate : 45
- Tool Dia : 0.2
- Genelate NC
- Tool Dia : 0.2
- isolate
-
drill
- CutZ : -1.8
- Travel Z : 2.5
- Feed Rate : 60
-
Outline
- Board Ciut Out
- Tool Dia : 1
- Margin : 0.1
- GapSize : 0.15
- Gaps : 4
- Plot Option
- CutZ : -1.6
- TravelZ : 2.5
- FeedRate : 60
- Tool Dia : 1
- MultiDepth : ON
- Depth/Pass : 0.2
- Board Ciut Out
NCファイルを作成後はCNCルーターでの基板加工ですね。
プリント基板作成は「両面プリント基板の制作実験(その7)オブラート転写方式」の記事で書いたオブラート転写方式の方が細かいパターンまで対応できますが、今回のものであれば「CNCルータでの両面基板制作(その2) Via処理と基板制作」の記事で書いた手法でCNCルーターでも対応でます。
CNCルーターを使った方がエッチングも不要だし、片面であればCNC側の作業を連続してできるので基板の再取付時の位置合せも不要で作業が簡単になります(エッチングする場合でも穴開けや基板切り出しにCNCを使います)。
パターン作成中の grblControlの画面表示が下図です。
パターン作成中の画面 |
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パターン作成中のCNCルーターの様子が下の写真です。
手前にある部分的なパターンは調整時の(というか失敗したw)ものです。
パターン作成中の写真 |
|
パターンの次は穴開けです。
穴開け時のgrblControlの画面表示は次のようになります。
穴開け時の画面 |
|
CNCでの作業の最後が基板切り出しです。
画面は次のとおり。
基板切り出し時の画面 |
|
CNCでの作業中はほとんどが待つだけの状態で楽(特に穴開け作業)です。
今回はベークライト基板なのでガラエポ基板よりは難易度が低いです。
CNC1610での基板作成を説明しているYouTube動画でガラエポは(硬いので)使わないと説明しているものもありました。
CNCルーターでのミリング結果 |
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次はソルダーレジスト処理ですね。
処理方法は「両面プリント基板の制作実験(その7)オブラート転写方式」の記事の最後の方に書いている方法と同じです。
結果は次の写真です。
ソルダーレジスト処理後 |
|
おまけで FlatCAM で変換した NCファイルをレーザーカッターで読込んでシルク処理もどきをやってみました。
レーザーカッターで刻印した後、シルバーのマジックで刻印部分を塗った後、アルコールを染み込ませたティッシュで余分なインクを拭き取りました。
位置が少しずれているのとレーザーで焦げた黒い粉をきれいに拭きとってからマジックを塗った方が良かったかなぁ(刻印文字に見えにくい)というのが今回の反省点であり、今後の課題です。
最後に PIC24FJ64GA004 チップをクリーム半田とホットガンを使って半田付け後、ピンヘッダを半田付けし、TQFPからDIPへの変換が完了です。^^
TQFP DIP変換基板完成写真 |
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★2018/01/15 追記 {
PIC24FJ64GA004 を今回作成した変換基板に半田付けした状態で端子間が短絡していないかチェック済みで問題ない状態ですが、切削した基板のパターン写真を拡大してよく見るとTQFPの端子間に切削対象外のベタパターンが細く残っています。
この細いパターンに PIC24FJ64GA004 の複数の端子が接続状態になった場合、相互に導通することになります。
切削対象外のベタパターン部を意図的に DesignSparkPCB で cupperのベタパターン化すればベタパターン部の輪郭部分も切削されるので今回のような切削対象外の細いパターンは他の広いベタパターンから分離された状態になるはずです。
今、DesignSparkPCB で確認してみたら信号を割り振らなくてもベタパターンは作れるみたいなので今後はベタパターンも意図的に作って置いた方が良さそうです(切削時間はかかるけど・・)。
}
★2018/01/18 追記 {
上記の追記ではベタパターン追加で TQFP のピン間ショート対策と書きましたが、本質的な対策ではなかったと思い、考え直しました。
ピンのフットプリントの問題ならフットプリントで対策すべきではないかと・・
ということでピンのフットプリントの幅を若干大きくしてピン間に不要なパターンが入らないようにしました。
また、外側のDIPのフットプリントも幅を小さくしてスリム化しました。
レーザーカッターでのシルク印刷内容を刻印する際の位置ずれ対策として変換基板の外側に枠を追加したので、レーザーカッターで刻印する際の位置合せ時、固定した紙等に刻印後、枠を目印に位置決めすることで刻印ずれ対策にします。
ぱっと見、違いが判りにくいですが、改善パターンの図を下に示します。
改善パターン |
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}
★2018/01/20 追記 {
改善パターンをCNCで切削してみました。
TQFP のピン間に残パターンは残っていません。でもその先の部分に細いパターンがあり、最悪ショートする可能性もあるのでやはり 上の1/15の追記のように DesignSparkPCB でベタパターンを作り、ベタパターンの周辺の輪郭も milling した方が安全そうです。(ソルダーレジスト処理すればショートの危険性はかなり少なくなるとは思うけど)
今回はホールにピンヘッダを通し易いように 0.8mm のエンドミルで穴開けを行い、そのまま、0.8mm のエンドミルでアウトラインの切出しを行いました。
ホールサイズが大きめですが流石にCNCではど真ん中に穴が開いています(手作業では到底こうはいきません)。
下の写真はパターンが見易いようにわざと反射する状態で撮ってみました。
改善パターンの切削結果 |
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}
★追記 2023/12/24 {
「リバーシブルなDIP変換基板」の記事に TQFP 44 ピンを DIP 44 ピンに変換するプリント基板の製作について書きました。
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